Q&A

ミネラルウォーター市場は平成元年からの13年間で10倍あまりに拡大しており、今やミネラルウォーターは生活必需品となりつつあります。一般家庭への浸透に伴いミネラルウォーターに関する様々なご質問が各方面から寄せられております。
そこで、これらのご質問の中から頻度が多くまた基本的な事項を選び、一般的なミネラルウォーターについて解説いたしました。

ミネラルウォーターの原料となるのはどのような水ですか。

日本の地形はその殆どが急峻な山地で形成されておりますので、天空から降った雨や雪の大部分は地表を一気に駆け下って海に流れ込みます。
そして、その一部が樹木の表面を濡らし、木の葉に溜まり、また一部が地中深く染み込んでゆき、長い年月をかけて砂や砂礫の層を幾重にも潜り抜け、粘土層や固い岩盤などの不透水層にぶつかっては滞留し、又、その層の上を流れてゆきます。その間、幾層もの地層が自然のフィルターになって、ろ過されると共に、一方で は地層を移動中、または滞留している間に、土壌の中の多種微量のミネラル成分を溶かし込んでゆきます。
これらの流れている地下水や滞留している地下水を汲み上げたり、または湧出している地下水を容器に詰めたものがミ ネラルウォーター商品なのです。
ミネラルウォーターが「天の恵み、大地の恵み、大自然の恵み」を戴いているといわれるのは、こういうことに由来するのです。


ミネラルウォーターの品名表示の定義を教えてください。

ミネラルウォーターは商品の特性上、気候・気象・地質・地形等自然の条件に強く関わりあっているので、世界各国によって考え方に差があり、品名表示の方法もそれぞれ異なっております。
日本では、現在のところ、農林水産省がミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン(1990.3.30)を策定して、製造者の指導を行ってお ります。
そのガイドラインによりますと、ミネラルウォーター類(容器入り飲料水)は、ナチュラルウォーター・ナチュラルミネラルウォーター・ミネラルウォーター・ボトルドウォーターの四つの品名に分類されております。


ミネラルウォーターの製造方法を教えてください。

世界各地で製品化されているミネラルウォーターは国によって製造方法が異なっています。中でも大きな違いは原水を殺菌する工程です。
日本やアメリカなどでは原水を加熱殺菌またはそれと同等以上の効果をもつ方法で殺菌処理を行うことが前提になっていますが、これに対してヨーロッパ諸国では無殺菌・無除菌で製造されています。このことは水に対するそれぞれの国の考え方及び文化の違いに由来しております。
日本では、食品衛生法の中にミネラルウォーターの製造基準が定められており、その原水の基準に適合した安全な水を用いて、同じく食品衛生法で認められた製造設備で製造します。
製造工程ですが先ず、汲み上げられた原水はストレーナーのような目の粗い濾過器を通して砂礫などの異物を除去した後、85℃30分の加熱殺菌か、またはそれと同等以上の効力をもつ殺菌、または除菌濾過を行ないます。
それらの中味は充填機で容器に自動的に充填され、更に巻締機でキャップが密栓・密封されます。このあと、容器にラベルが貼付またはヒートシールされ、ダンボール箱に詰め出荷されます。


名水百選とはどのような基準で選ばれた水なのでしょうか。

1985年に環境庁が日本全国にある清澄な水について、優れたものの再発見に努め、一般に紹介しその普及を図りました。その狙いは水資源、水環境の保護の立場から選んだもので、関係する地域住民の努力を顕彰する意味合いを込め設定されたものです。こうした考えに基づき全国から100箇所の水を選び「名水百選」としました。
従って、名水百選の水が直接「おいしい水」「安全な水」を意味するものではありません。
なお、ミネラルウォーターの表示及び広告などに「名水百選」に係わる文言を用いる場合には、1991年7月23日付環境庁水質保全局水質規制課が示した指導内容「ミネラルウォーターと名水について」に準拠することが必要です。


「水の日」及び「水の週間」はどのように決められたのですか。

「水の日」は毎年8月1日とし、この日を初日とする一週間を「水の週間」として定められたものです。

年間を通じて水の使用量が多く、水についての関心が高まっている8月上旬に、水または水資源の大切さを考えて、閣議の了解事項として1977年5月31日に制定されたものです。


ミネラルウォーターが日本で造られるようになったのはいつ頃からですか。

日本のミネラルウォーターは明治中期が夜明け

日本のミネラルウォーターの歴史を辿ると明治時代の中期がその夜明けといえるでしょう。
1880年代にスパークリングミネラルウォーター(天然炭酸鑛泉水)が瓶詰めされ、横浜・神戸の居留地の外国人やホテルに提供されていたようです。

文献によりますと、明治19年(1886)には三ツ矢平野水(川西市平野)が「三ツ矢印平野水は天然炭酸水を含める東洋唯一の純良鑛泉なり」とラベルに銘記し瓶詰・販売されていました。
また、明治23年(1890)にはクリフォード・ウィルキンソン炭酸鑛泉水(西宮市生瀬)が販売されていました。布引、有馬、宝塚、平野と続く六甲山麓の花崗岩層から湧出する鑛泉水には炭酸ガスを含有するもの以外に、炭酸ガスを含んでいないものもありました。

ホテル用の時代

昭和4年(1929)に堀内鰍ェ「富士ミネラルウォーター(山梨県下部町)」を瓶詰・発売しております。メジャーなホテル用として開発されたようですが、その陰には帝国ホテルの犬丸会長の尽力があったと言われております。

業務用全盛の時代

戦後の昭和42年頃(1967)からウィスキーの水割りが流行り、一世を風靡いたしました。そして、業務用ミネラルウォーターの消費が増え、ニッカウヰスキー梶A日本鉱泉飲料梶Aサントリー鰍ネどが次々にミネラルウォーターを商品化して行くようになりました。この当時はテーブル容器としてのガラス瓶入りが主流でした。

家庭への浸透

昭和58年(1983)にハウス食品鰍ェカレー用のチェイサーとして「六甲のおいしい水」を発売いたしました。これが家庭用ミネラルウォーターの先駆けとなりました。
当初は穏やかな伸びでしたが平成元年から平成2年にかけて大手食品会社のサントリー梶Aキリンビバレッジ鰍ェ家庭用に進出してから、ミネラルウォーター市場は大きく膨らみ、その後も順調に市場を伸ばし現在に至っております。

軟水、硬水はどのようにして決めるのですか。

簡単に言えば、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンが比較的多量に溶け込んでいるのが硬水、含有量の少ないのが軟水と言い、その程度は硬度と言う指標で表します。
即ち、硬度とはカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量を、これに対応する炭酸カルシウム量に換算したものです。
(ドイツ硬度及びフランス硬度は換算の仕方が異なります。)
そもそも、軟水・硬水は「洗濯する時の石鹸の泡立ち」からきたもので、人々の生活に密着したものです。従ってその決め方は人により、また地域により異なります。従って、何かの法律のような基準があって規定すると言うものではありません。
日本の場合、理化学辞典によりますと「水100cm3中に酸化カルシウムとして1mgを含むとき1度とし、マグネシウムは1.4MgO=1CaOの関係で酸化カルシウムに換算する。通常20度以上を硬水、10度以下を軟水と言う」と定義しております。
これを硬度で換算すると以下のようになります。

178mg/l未満・・・・・軟水
357mg/l以上・・・・・硬水
ところで、日本の地下水、鉱泉水では硬度が178mg/lを超えるものが稀なので殆どが軟水と言って良いでしょう。
硬度の簡便計算式
カルシウムmg/l×2.5+マグネシウムmg/l×4.1=硬度mg/l


軟水・硬水はどのように使い分けされているのでしょうか

水は化学構造上、アルコール等と同じように、物の香りや味を引き出す力があります。
それもミネラルの少ない軟水の方が抽出する力が強いのです。ですから、コーヒー、紅茶、緑茶やウィスキーなど香りを大切にするものには、軟水を用いた方が美味しく戴けます。
ご飯なども、穀類のよい香りを引き出すために軟水が抜群です。
お茶には人それぞれに苦味などの好みがあり、軟水では緑茶の渋み・苦味を楽しむことができますし、硬水ではよりマイルドで飲み易くなります。
また、コーヒーの場合も、浅煎りのアメリカンでは軟水を用いることで、豆本来のよい香りとさっぱりとした味を楽しむことが出来ます。一方深煎りのエスプレッソでは、硬水を用いますと、渋みの成分がカルシウムなどに結びついて、苦味・渋みが除かれて、まろやかになり、コクが加わります。
昆布やカツオの出し汁を取るときにも、軟水を使うと、グルタミン酸・イノシン酸などのうまみが抽出され易い。
肉料理の場合、抽出力の強い軟水では、嫌な肉の臭みまで出てしまいます。
そこで、硬水を使いますと、肉の蛋白質とカルシウムが結合して、硬蛋白質(アク)として抜けて、いい味が出てきます。


総溶解固形分(TDS:Total Dissolved Solids)とは何ですか

ミネラルウォーターには、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム等が塩化物、硫酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、珪酸塩の形で溶解しておりますが、それらのミネラル成分の総量を表すのに、蒸発残留物と総溶解固形分という二つの方法があります。
蒸発残留物とは、水を蒸発・乾固したとき、残る物質を言い、水中に含まれる溶解性物質及び懸濁物質の総和です。
又、蒸発している間に、重炭酸塩など成分の種類によっては改変を受けるものもありますので、その場合、その分を補正して計算したものが総溶解固形分(TDS)です。
蒸発残留物(r/l)+HCO3/2=総溶解固形分(TDS)


おいしいミネラルウォーターとは

おいしさはお客様が見つけるもの
「おいしさ」については、製造者の皆さんが研究所のトレーニングされた評価パネルを用い、官能検査(きき水テスト)を行って得たデータを統計的に解析することで、お客様の嗜好を先取りしようと努めています。総論的には少しずつ判ってきたようですが、企業秘密でもありますので、殆ど社外には発表されていません。
官能分析評価は専門家でもなかなか難しいと言われますので、一般消費者では尚更、識別困難かと思われがちですが、かえってそれはきっちりと評価が下されているようです。
即ち、お客様が長い間飲用を繰り返しているうちに、どのミネラルウォーターが自分に適したものか、そして一番おいしいかを探し出しているのです。
おいしいミネラルウォーターとは
1)ミネラルウォーターのおいしさは、特定の成分が「多い、少ない」ではなくて、多種微量のミネラル成分のバランスによって決 まります。(そのため、ミネラルウォーターのおいしさを説明するのは難しいのです。)
2)マクロ的には次のことが言えます。
@「おいしさに寄与する成分」・・・プラスに働く物質が適量含まれていること。
    →カルシウム、カリウム、二酸化珪素、重炭酸、溶存酸素、二酸化炭素等
    「まずさに関係する部分」・・・・マイナスに働く物質
    →マグネシウム、硫酸イオン、硫化水素、マンガン、鉄、銅、亜鉛等
Aこれらの成分は総てバランスしていることが大切です。また、成分間の相乗作用の問題もあります。
    例えば、マグネシウムは渋みに関係する部分ですが、カルシウム等とある割合で共存しますと、 逆に、おいしく なる場合もあります。
Bミネラルの量は多すぎても、また、少な過ぎてもいけません。
    ミネラルを全く含まないか又は殆ど含まないものは「気の抜けた水」になります。
    また、ミネラルのバランスにもよりますが、適量のものは「まろやか」ですし、多すぎると「苦味」「塩味」「渋み」 などが出てきます。
3)飲む温度もおいしさに関係します。適温は10℃〜15℃(夏場は10℃〜20℃)
4)そのほか、体調、外気温度・湿度なども無関係ではありません。


ミネラルウォーターの銘柄はどのくらいありますか

毎年変動があって正確な数はなかなか掴めませんが、いろいろな情報を整理して見ると、国産では400社、450銘柄あると推定しています。又輸入品は約50銘柄ですから、併せて500銘柄位が流通していると思われます。
また、最近では、水を電解処理したアルカリイオン水、海洋深層水を利用した飲料も流通しています。